「Twitter 終了」がトレンドに入った。そもそもTwitter は終わるのだろうか。
「ハードコア」のあとに
先週、イーロン・マスクが「ハードコアに働けない人は退職を選んでくれ」と全従業員に最後通帳を突きつけた。それは、すでに半分以上の人員がレイオフされたあとだ。
しかし、レイオフと「ハードコアの踏み絵」の間には大きな差がある。レイオフはあくまで過剰(とイーロン・マスクが考える)人材を会社が選んで辞めさせるのに対して、今回は「自発的に」やめさせるきっかけを作ったということだ。
匿名アプリBlindの内部調査によれば、その結果「残った人材の75%」が離れることを選んだ。この数字が正しいかどうかは別にして(おそらく、もっと多くの人はしぶしぶ残ることを選ぶはず)、結果として相当な数の社員が、Twitter を離れることを選んだ。

結果として、Twitterの社員から「Twitterが死ぬまであと1週間だよ」との声が漏れている。

運営に必要不可欠な人材がいない
問題は、本来Twitter の運営に不可欠だったはずの人材も、多くがやめてしまったということだ。
マスク氏のチームは、Twitterの運営の要である従業員ともミーティングを開き、残留を説得しようとした。マスク氏は売り込みの際、自分は勝ち方を知っており、勝ちたい人は自分に加われと言ったと、ある人物は語った。
そのうちの1つでは、一部の社員がサンフランシスコのオフィスの会議室に呼び出され、他の社員はビデオ会議で呼び出された。午後5時の締め切りが過ぎると、電話をかけていた何人かが電話を切り始め、マスク氏が話し続けていても、帰ることを決めたようだった。
Mr. Musk’s team also held meetings with undecided employees who are key to Twitter’s operations to try to persuade them to stay, three people said. In his pitch, Mr. Musk said that he knew how to win and that those who wanted to win should join him, one person who spoke with him said.In one of those meetings, some employees were summoned to a conference room in the San Francisco office while others called in via videoconference. As the 5 p.m. deadline passed, some who had called in began hanging up, seemingly having decided to leave, even as Mr. Musk continued speaking, two people familiar with the meeting said.
https://www.nytimes.com/2022/11/17/technology/twitter-elon-musk-ftc.html
これは当然の帰結だ。「フォームにクリックしないならクビ」などという常軌を逸した行動をするCEOのもとで働きたい人は多くはない。
Twitter Blue(イーロン・マスクが固執していた)の認証機能をリードしていたデザイナーと、エンジニアが辞職。。クリティカルな機能を管理していたインフラエンジニアも辞職。

Androidチームは全部消滅(6兆円の価値があるWebサービスで、Androidチームが消滅?)。

マスクの移行チームが「司令部」としていた、運営チームからも何人ものメンバーが辞職。


デプロイ、SRE、エッジチームが完全に消滅。

ということで、既に崩壊している。Twitter本社はクローズして、誰がやめて誰が残っているかをチェックしているらしい。
これから何が起こるか
とはいっても、彼は億万長者で、熱狂的なファンがいて、欲しいものはだいたい手に入る(Twitterでさえ)。もし私財をもっと投じても良いとするなら、Twitterの窮地を救う優秀な「マスクチーム」を連れてくることも不可能ではないと思うし、彼はそういうことを狙っているのだろうと思う。
しかし、根本的な問題は、彼がテスラやSpaceXでやっている手法が、Twitterで通じるようには見えないところだ。
スタートアップの従業員が「ハードコアに」働くのは、ストックオプションを行使してFIREするか、なにか価値があると思えることに全力投球するからであって、億万長者を更にリッチにすることではない。
テスラは気候変動を解決するクールな電気自動車であり、SpaceXは壮大な夢を持つロケット企業で、ロケットに関われるなら10時間でも12時間でも働く人はいるだろう。
SpaceXで出来ることは、おそらく他の企業では出来ない。だから多くの人は彼の企業で働く。
しかし彼が今経営しているのはTwitterである。Twitterは火星行きのロケットではない。更にひどいことにスタートアップでもなく、横暴なビリオネアによって気まぐれにレイオフされる、単なる「ハードコアな」プライベートカンパニーだ。
TwitterのエンジニアはもちろんTwitterを愛しているだろうけど、Google やAmazonで働いていてもハッピーだろう。ただ、権限をデリゲーションされた、と感じる人はいるだろうし、そういう人がすべてをリカバーするくらいに働く可能性はゼロではないと思う。(何のために?ハードワークが好きなだけかもしれない)
だから、今Twitterに残っているのは、どうしても辞められない人、例えばビザ(アメリカのビザは種類によるが、60日以内に再就職しないと執行するH1-Bビザが一般的)の問題がある移民(多くはアジア系)や、家族が病気で仕事が必要な人などが多いと報道されている。
デリゲーションにやりがいを感じる生粋のハードワーカー以外は、転職先を探しながら働くことになるだろう。そもそも、市況が悪いと入っても、アメリカのテック企業は人材がぐるぐるしていて、Twitterの人はGoogleにもMetaにも知り合いがいる(Tiktokのように採用を増やしている企業もある)。
なんとか数年を乗り切れば、マスクチームがもっと増えて、サービスは持続的になるかもしれない(あまりそういう予想はしていないけど)。
個人的見解としては、Twitterが今すぐ全面的に使えなくなることはないとは思う。Twitterはすでにmac miniでホストされるモノリシックなrailsアプリケーションではなく、高度に分割されたマイクロサービスの集合であり、これまでのSREの遺産もある。
ただ、ゆっくりと不具合が増え、イーロン・マスクの気まぐれはうまく行かず、時々落ちるようになり、長期のダウンタイムが発生した時に人々が見放す、という形で死んでいくのではないだろうか。あるいはセキュリティインシデントが起こる可能性もある。
すべての死がそうであるように、サービスの死もまた予測不可能だ。その日は急激に訪れ、明日かもしれないし、ずっと先に訪れ、緩慢なものかもしれない。ともあれ、イーロン・マスクが自らの行動を改め(彼のエゴを粉々にして)、何かを変えない限りは、それは確実に訪れるのだろう。
同感です。